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企業内診断士による雑記

国税局「税務調査に入ります」・・・どうしたらいい?

国税局(小規模法人であれば所轄税務署)から電話があった時ってドキドキしますよね。

大半は提出した申告書についての補足確認の電話なんですが、突然「税務調査に伺いたいのですが」と言われて胸が苦しくなる・・・経験されたことがある方も多いのではないでしょうか。

税務調査の事前連絡があった時はどのような対応をとればいいでしょうか。

自分の経験をもとに留意点をまとめてみました。

 

 ①当局との事前打ち合わせを侮るなかれ

 規模にもよりますが、税務調査前に調査官が来社して事前準備資料や日程について打ち合わせを行うことがあります。この時点ですでに戦いは始まっています。受付の来訪者リストや内線表など、後々調査の端緒になりそうなものは片づけておきましょう。

また、最近の調査の傾向としてデータ提出を要求されることが多いようです。電子帳簿に移行しているのであればともかく、そうでなければ紙ベースの帳票保存が原則となりますので必ずしも全てをデータ提出する必要はありません。

事前打ち合わせ時にデータ提出を要求され、それを承諾した場合に後で断るのは難しいでしょう。調査官の要求に応じるかどうかはよく考えてからこたえたいものです。

 

②要求された資料を精査しておこう

 税務調査(特に法人税・消費税)にあたっては事前に大量の資料提出を要求されますので、それらを遺漏なく整えておくことが必要です。

もちろん提出する資料については事前にすべて目を通しておく必要があることは言うまでもありません。チェックの視点としては、

 

 ・簿外資産はないか(特に在庫)

 ・期末棚卸は適正になされているか

 ・役員報酬等は適正か(規程との整合、定期同額等)

 ・固定資産として計上すべきものを損金としていないか

 ・資産の計上タイミングは適正か(事前検収等がないか)

 ・売上計上は適正か(期末取引、返品、リベート等をチェック)

 ・試験研究費は適正に計算されているか(税額控除を受けている場合)

 ・海外グループ取引が移転価格税制に抵触しないか

 

数え上げたらキリがありませんが、上記のような視点を参考にチェックしてみるといいでしょう。

 

③社内調整をしよう

 税務調査では会社のあらゆる業務について質問を受ける可能性があります。リスク回避のためにも当該業務について一番詳しい人に応対してもらう方がよいでしょう。

税務調査にあたり、質問事項をあらかじめ想定しておき応対予定者と打合せを行っておいた方がよいかと思います。また、応対予定者以外の人との接触がある可能性もありますので、社内に向けて下記についての周知も検討ください。

 

 ・喫煙所やトイレ、廊下等での会話には注意すること

 ・資料提出にあたっては事前に経理部門と協議すること

 ・調査官からメール等を見せるように要求されても返事を保留し、経理部門へ相談すること

 ・処理について質問を受けた時に安易に「経理から指示されたとおりに処理した」等の発言をしないこと。ただの処理ミスで済む話が、「経理部門が主導して課税逃れをおこなった」と見なされ、重加算税というペナルティを課せられかねない。

 

上記準備をした後はじたばたしても仕方がないので、極力調査に協力する姿勢を見せて当局との信頼関係構築に努めましょう。

相手も人間です。

信頼関係を築くことができれば、あまり変なことはされないはずだと割り切りましょう。

 

「在庫には税金がかかるんでしょ?」←これは真実?

 

よく聞かれます。

毎回、「在庫に対して直接税金がかかることはないんですよ。結果として税金負担が増えることが多いですけどね」と返していますが腑に落ちない顔をされることが多いです。

 「在庫に税金がかかる」というのは本当でもあり嘘でもあります。

こういう質問をする方は在庫に対して何パーセントといった形で税金がかかってくると考えている方が大半です。

 

「在庫税」、そのような税金はありません。

 

但し間接的には法人税という形で税負担が増えることにつながるので、「在庫に対して税金がかかっている」と言えなくもないんです。

ではどのような形で在庫に税金がかかっているんでしょうか?

先に答えを言いますと、「在庫増=利益増=法人税負担増」とつながっています。

どういうことでしょうか?

それを考えていくためには、①在庫と売上原価との関係や、②売上原価と利益の関係、③利益と法人税との関係、について把握しておく必要があります。

 

①在庫と売上原価の関係

売上原価をざっくり言うと「商品仕入や製造原価」になります。

ただし、その説明は正確ではありません。正確な売上原価を算出するためには期首在庫・期末在庫を加味しなくてはなりません。

正確には「売上原価=期首在庫+当期仕入-期末在庫」となります。

在庫が増えるという事は売上原価が減ることにつながります。

例えば、

 期首在庫 100

 当期仕入 300

 期末在庫 150

 

のときの売上原価は100+300-150=250となります。

それでは、在庫が増えて期末在庫が200になると売上原価はどう変化するでしょうか。

 

 期首在庫 100

 当期仕入 300

 期末在庫 200

 

この時の売上原価は100+300-200=200と減少します。

売上原価は費用ですから、費用が減少したという事になりますね。

 

②売上原価と利益の関係

売上原価という費用が減少するので、当然利益は増えることになります。

売上原価が250から200に減少したので、当然税引前利益は50増加します。

 

③利益と法人税との関係

法人税は利益に対して課税されます(正確には利益ではなく課税所得に対して課税されますが、ここでは話を単純にするために利益に課税されたとみなします)。

現在日本の法人税実効税率は約30%ですので、利益が50増加したという事は、法人税は50×30%=15増えるという事になります。

 

実際にはこの例のように単純に・直線的に税金が増えていくわけではありませんがおおむね傾向としては在庫増=税金増となってきます。

ゆえに、「在庫には税金がかかる」というのは一面の真実を表しているわけです。

 

税金を抑えるためにも極力余剰在庫は持たないようにしましょうね!